第53話:営業業績向上と権限委譲
今回は、新型コロナウイルスの感染拡大が、早期に終息に向かうことを願いつつ、営業業績向上と権限委譲について述べてみます。
権限とは、「その職務を遂行するうえで必要な権利であり、組織内で公認された権力」ということができます。これはまた、その職務を遂行する上で認められている「自由裁量の範囲」であるということもできます。
従って、権限委譲とは営業マネジャーが自分の職責の一部を部下に包括的に任せる(部下の自由裁量に任せる)ことであるといえます。
人は本来的に自らの裁量で仕事を進めることを望むものであり、営業マネジャーはこの点をしっかり受けとめて、できるだけ権限委譲を行い、部下の自発的で創造的な業務推進を図り、職場の目的実現に努力する必要があります。
権限委譲の目的と効果は次のようなことがあげられます
(1)権限委譲と部下育成
権限委譲を英語でエンパワーメントといますが、これは力を増すこと、つまり能力の強化という意味です。職場のマネジメントにおいてあえてエンパワーメントという用語を用いるときは「人材育成施策」という考え方を含んでいるといえます。
「六割任用」という言葉がありますが、60%くらいの能力しか持ち合わせのない部下でも、その仕事を任せるということです。任された部下は、上司から信頼を受けていることで精一杯チャレンジするので人材育成につながるという考えです。
権限委譲は、部下育成機会を提供することになります。
(2)権限委譲とマネジメントコストの低減
権限委譲には、マネジメントコストの低減という機能もあります。
部下に権限委譲を行えば、部下だけで完結する仕事が増え、日常管理の負担は軽減され本来の管理的業務に専念しやすくなります(部下の能力が高まっていることが前提ですが)。
すなわち、マネジメントコストは低減されます。
結果として、営業マネジャー1人が直接マネジメントできる部下の数は、従来よりも増え、ここでもマネジメントコストは低減されます。
(3)権限委譲と自己統制
権限委譲によって、営業マネジャーが部下の仕事に直接関与する機会は減少するので、部下には自己統制が求められます。
自己統制は、自律性が高まり、仕事全体が見通せ、自然と創意工夫や改善の問題意識が醸成されていき、「私の仕事」という責任感も持つようになります。
仕事の拡大化、自律化という繰り返しが能力開発の原則です。
ただし、自己統制は放任ではなく「任せて任せず」です。マネジャーは、ホウ・レン・ソウなどを通じた仕事の定期的な進捗把握を欠かしてはならないのです。
(4)権限委譲、部下育成、自己統制の相乗効果
権限委譲、部下育成、自己統制型の管理はセットで推進すれば、シナジー(相乗効果)が期待できます。
すなわち、自律的で能力の高い部下が自力で成果を上げることで、営業マネジャーはより管理的業務に専念でき、マネジメントコストの低減と職場成果の拡大がお互いに促進し合うのです。
逆に、育成努力を伴わずに権限委譲をすれば、現場にミスやトラブルが増加してしまうし、権限委譲したはずなのに部下に過剰統制を行うと部下はマネジャーに依存的にな
り、マネジメントコストを押し上げてしまうことになります。
以上のことから、営業業績向上の権限委譲は、部下育成・自己統制の管理とセットで推進し、部下育成・自己統制の向上を図り、自律的で能力の高い部下が自力で成果を上げることで、営業マネジャーがより管理的業務に専念でき、マネジメントコストの低減と職場成果の拡大がお互いに促進し合うことが重要といえます。
以上、営業マネジャーの営業業績向上の権限委譲について少し述べてみました。
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