第86話:営業業績向上と人的資源開発(人材育成)の考え方

営業業績向上の人的資源開発(人材育成)は、職場で仕事を通じて行われる能力開発が、メンバー自身が自ら学んでいく学習と、上司・先輩によって教えられて学ぶ学習という2つの側面の統合を目指すことが重要な焦点と考えます。

2023年が始まりました。明けましておめでとうございます。

経営環境は、新型コロナウイルスの感染再拡大、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化、円安、原材料の高騰、供給網の混乱など変化が激しい状況ですが、私どもは、今年も環境変化時代の「営業業績向上の視点」をお届けしてまいります。
「継続的な営業業績向上の自動化」の一助にしていただければ幸いです。

今回は、営業業績向上と人的資源開発(人材育成)の考え方について述べてみます。

今日の営業職場の課題は、①維持的業務の遂行をする、②創造的業務の遂行をする、③維持的業務の改善・改良をし、効率化する、④創造的業務の成果を標準化・定型化し、職場のなかに定着化させる、職場集団全体の能力を変化に即応できるように創造的体質に転換していく、など4つの基本的課題が見てとれます。

1、今日の営業職場の課題と人的資源開発(人材育成)
 高度成長期の職場では、維持的業務を確実に成し遂げること、仕事のやり方に改善を加え効率化を推し進めていくことが基本課題でした。しかし、今日の営業職場では、これまでのやり方を効率化するだけでは、目標達成は、おぼつきません。変化しつづける環境は、つねに「新しい何か」を生みだしていく創造的活動を営業職場に強く求めています。

こうした職場課題の変化にともなって、職場メンバーンに求められる能力も変化し、開発の対象となる能力領域も拡がっています。したがって、伝統的なOJTの考え方と方法論だけに頼っていたのでは、職場メンバーの能力開発課題の変化に効果的に対処していくことは出来ないといえます。

営業課長・所長には、伝統的OJTの限界を超える営業職場での人的資源開発(人材育成)の考え方と方法論をつくりあげていくことが必要となっています。

2、営業課長・所長の人的資源開発(人材育成)の考え方  
(1)職場の中でメンバーに起こる4つの学習事態
 職場という環境のなかで仕事を通じてメンバーに起こる学習は、まず「意図的学習」と「偶発的学習」に区分することが出来ます。意図的学習とは「こうした知識や技術を身につけよう」あるいは「身につけなければならない」という明確な意図をもって行う学習をいいます。
これに対し偶発的学習は、自ら学ぼうとする意図はなかったが活動の過程や周囲の観察を通じて偶然に気づく、あるいは学んでいることすら気づかずに学んでしまう学習をいいます。

また、職場メンバーの学習活動は、「能動的学習」と「受動的学習」とに区分されます。「能動的学習」とは、自ら学ぶべき内容の選択や目標の設定を行い、主体的に取り組むような学習です。これに対して「受動的学習」は上司や先輩に教えられて学ぶ学習を指します。

(2)4つの学習事態と学習のタイプ
 意図的学習で受動的学習は「追従型学習」、意図的学習で能動的学習は「自律型学習」、偶発的学習で受動的学習は「模倣学習」、偶発的学習で能動的学習は「発見学習」、といえます。

伝統的OJTは意図した学習タイプで「追従型学習」です。
伝統的OJTの方法論は、ややもすればメンバーの主体性や自律性を軽視しがちであり、何よりも仕事の遂行プロセスや職場の人間関係の中で起こる偶発的学習を見過ごしています。
営業課長・所長が効果的な人的資源開発(人材育成)を行おうとするならば、メンバーの自律的学習はもとより偶発的学習にまで目配りをする必要があります。

以上のことから、営業課長・所長の職場での人的資源開発は、職場で仕事を通じて行われる能力開発が、それが意図的であるか偶発的であるかを問わずメンバー自身が自ら学んでいく学習と上司・先輩によって教えられて学ぶ学習という2つの側面の統合を目指すことと考えます。いい換えれば職場のなかでメンバーに起こる4つの学習事態のすべてを視野におさめていかなければならないといえます。

御社の営業課長・所長の人的資源開発(人材育成)は、いかがですか。
そのしくみづくりから運用、機能化への取り組みはいかがでしょうか。

最後までお読みいただき有難うございました。

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